アセチルコリンの減少を防ぎアルツハイマー病の進行を押さえるドネペジル(アリセプト)

塩酸ドネペジルはアルツハイマー病の治療薬として国内で使用されている最も代表的な治療薬です。脳の神経細胞はアセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質を介して情報のやり取りをしていますが、アルツハイマー病の患者さんはこのアセチルコリンの量が少なくなっています。

塩酸ドネペジルはアセチルコリンの分解酵素の働きを阻害して、脳内のアセチルコリンの量を保つ働きがあります。ただし、塩酸ドネペジルが永続的に効果を発揮することはなく、服用当初は認知機能の改善がみられるものの、最終的には病気は進行していきます。

この薬は軽度から中等度のアルツハイマー病が適応となっており、病状が早い段階であればあるほど効果が大きいことがわかっています。ただしあまりに早い段階で投与すると、アルツハイマー病なのかほかの病気なのか判断がつかないことがあります。

比較的安全な薬ですが、嘔吐や下痢、便秘などの副作用も少なくありません。頻度は低いものの頻脈、気管支喘息、消化性潰瘍、睡眠障害、せん妄、高齢者の場合は脳血管障害のリスクもあるため主治医の指示を守って服用することが大切です。

メマリー(第一三共)、レミニール(ヤンセンファーマ)など相次ぐ新薬の承認で選択肢が広がる

2010年は、製薬企業が近年開発に注力しているAD(アルツハイマー)治療薬や経口抗凝固薬などの開発が最終段階に入りました。複数の製品が2010年に承認申請し、 2011年1月に承認を取得したものです。

AD治療薬では、国内ではエーザイの「アリセプト」が唯一の薬剤となっています。同薬は、脳内神経伝達物質であるアセチルコリンの濃度を上昇させる「アセチルコリンエステラーゼ阻害作用」により効果を示します。適応は「軽度・中等度・高度のADにおける認知症症状の進行抑制」です。

医療現場で広く使用されており、国内年間売上高は900億円以上に上っています。ただ効果のない患者や、副作用で服用できない患者もいます。そのため製薬会社は新規AD治療薬の開発を進めており、2010年2月に3成分4製品が一斉に承認申請を行いました。

このうち第一三共の「メマリー」と、ヤンセンファーマの「レミニール」の2製品は2011年1月に承認を取得し、同年3月に薬価収載されました。ノバルティスファーマと小野薬品の「イクセロンパッチ / リバスタッチパッチ」も同年4月に承認、6月に薬価収載されました、アリセプトの独断場だった国内市場に競合品が参入することになりました。

第一三共のメマリーはNMDA受容体拮抗薬で、グルタミン酸受容体の1つであるNM-DA受容体の拮抗により効果を示します。アリセプトなど他の薬剤とは作用機序が異なるため、海外では併用でも使用されており、日本でも医師の判断で併用が行われる可能性があります。適応は「軽度・中等度・高度のADにおける認知症症状の進行抑制」です。

ヤンセンファーマの「レミニール」はアリセプトと同様、アセチルコンリンエステラーゼ阻害作用を持つほか、神経伝達物質の放出を促進する「ニコチン性アセチルコリン受容体に対するアロステリック増強作用」もあります。この2つの作用によりADで低下しているコリン機能を賦活化することで効果を示します。

リバスチグミンは、国内初と成る貼付剤のAD治療薬です。同剤は、記憶や思考、行動に関して重要な役割を担うアセチルコリンの分解酵素であるコリネステラーゼの阻害薬です。アリセプトが阻害するアセチルコンエステラーぜにくわえ、ブチリルコリンエステラーゼも阻害することが特徴です。貼付剤のため、服用コンプライアンスの改善や介護者の負担軽減なども期待されています。

これら以外にも開発中のAD治療薬があります。日本イーライリリーは、脳に沈着したアミロイドβタンパクを除去する作用を持つ抗体医薬ソラネズマブ(一般名)の臨床第V相試験を進めています。ただ、同剤と平行して開発を進めていたγ-セクレターゼ阻害薬セマガセスタットは、国際共同臨床第V相試験の予備データで有効性が示されなかったため、開発中止となっています。

アリセプトは2011年に競合品となる新薬3成分が発売されたほか、後発医薬品も参入するため、エーザイは次世代のAD治療薬として期待される新規モノクローナル抗体「BAN2401」の臨床第T相試験を米国で開始しました。アリセプトがADの症状の進行を抑制するのに対し、同剤は症状の進行そのものを停止させる可能性があると期待されています。

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