どんなに忙しくても、かかせないのがティータイム。
緑茶やコーヒーを一杯飲むと
ホッとしたり、スッキリ目が覚めたりしますよね。
さて今週のサイエンストピックスは、
そんな緑茶とコーヒーにもう一つの効果、
糖尿病を予防する効果があるいう報告についてです。
緑茶・コーヒー愛飲者は糖尿病リスクが軽減
先日、大阪大学の磯博康教授(公衆衛生学)らによって
緑茶、コーヒーの消費量と糖尿病の発症の関係についての調査結果が
Annals of Internal Medicine誌という医学専門誌に報告されました。
それによると緑茶を1日6杯以上
またはコーヒーを一日3カップ以上飲む人は
まったく飲まない人に比べて2型糖尿病(注)にかかる割合が
33%〜42%ほど低いそうです。
つまり、緑茶やコーヒーをよく飲む人は糖尿病にかかりにくいと言えるようなのです。
さて今回の調査ですが、
緑茶とコーヒーが共にカフェインを含んだ飲み物である
ということに注目しています。そして、
さまざまな要素(肥満の度合いを示すBMI値(注)や喫煙習慣の有無など)
に関して補正を行なった上で、
緑茶やコーヒーの消費量をカフェイン摂取量に置き換えてから
統計的に糖尿病発症率との関係を算出しています。
こういった統計処理をすることで
緑茶とコーヒーを同じ尺度で比べられるわけですね。
こうしてカフェイン摂取量で見たときに、
摂取量が増えるほど糖尿病発症リスクが小さい
という結果が得られたのです。
つまり、“カフェインを多く取ると糖尿病の予防になる”
ということです。
今回の調査ではさらに踏み込んで
「カフェイン摂取量=緑茶・コーヒー消費量」と考え、
「緑茶やコーヒーを多く飲むと糖尿病にかかりにくい」と結論づけられています。
統計からは見えない要素たち
しかし、
ここで「カフェイン摂取量=緑茶・コーヒー消費量」
と考えてしまうことは少し乱暴な論理であるとお気づきでしょうか。
なぜなら、統計データにはあらわれない様々な要素がウラに潜んでいるからです。
まず、カフェイン摂取は緑茶・コーヒーに限ったものではありません。
なんといってもコーラ類にたっぷり含まれています。
論文でも触れられていますが、ソーダ類の影響は今回の調査では不明です。
またコーヒー豆にはデカフェといって、
カフェインを含まないように加工を施した豆も売られているので、
それを飲んでいた場合は、カフェイン摂取量はコーヒー消費量と比例しません。
ですから、デカフェを飲んでいた場合の影響も今回の調査ではわかりません。
そして、もう一つ大事なこととしては、緑茶とコーヒーは
カフェインが入っているだけの飲み物ではないということです。
例えば緑茶にはカテキン、
コーヒーにはクロロゲン酸といった物質が含まれています。
これらの2つの物質はポリフェノールの一種で、
活性酸素を除去して抗酸化作用を持つといわれています。
この抗酸化作用というのは非常に重要な可能性を秘めていて、
最近も糖尿病の専門誌
Diabetesに活性酸素を除去することで
糖尿病のときのインスリンの効きが改善されるという報告がありました。
このように、カフェイン以外の成分も
糖尿病のリスクを下げることに一役買っている可能性が考えられます。
というわけで、緑茶やコーヒーをよく飲む人が
カフェイン摂取量が多いのは当然のことなのですが、
それ以外の成分も糖尿病予防に貢献している可能性を
忘れないでいただきたいのです。
カフェインだけをサプリメントとして取るのではなく、
多様な成分を含んだ食品として、
緑茶・コーヒーを飲むことこそが糖尿病予防にとって重要なのだと思います。
最後に
この調査がユニークな点は、何といっても
緑茶を取り上げて、糖尿病発症率に結びつけたことにあるでしょう。
いままで欧米ではコーヒーがよく飲まれているためか、
欧米諸国ではコーヒーが糖尿病予防にいい
という報告が数多くなされてきました。
一方で、日本人についてのコーヒーと糖尿病発症率の関係の調査は
今回が初めてです。
コーヒーですら世界初であるのに、いわんや緑茶をや。
ということで、この磯教授らの報告は
「緑茶が糖尿病にいい!」
という
世界初の統計的証拠になるだけに留まらず、
緑茶の良さを世界中にアピールする広告となって、
世界中に向けて日本の緑茶文化を発信していく、
なんて考えられますね。
こういう調査の後押しがあると、
海外でも健康に敏感な人たちの間で緑茶を出すカフェが大流行、
なんていう日も近いかもしれません。
注)
*2型糖尿病…糖尿病には2つの型があります。
そのうち2型糖尿病は生活習慣病の一つで、
血糖値抑制ホルモンであるインスリンの効きが悪くなった結果、
血糖値が下がりにくくなる病気です。
現在の日本人糖尿病患者のほとんどは2型糖尿病といわれていて、
この病気は放っておくと動脈硬化や心筋梗塞などの合併を招く可能性のある
恐ろしい病気なので、生活習慣改善による予防や
早期の治療が重要と考えられています。
**BMI値…Body Mass Indexの略で、
身長と体重から求める体格指標のこと。
計算式はBMI = 体重[kg] / 身長[m] / 身長[m]。
標準値は22で、標準から離れるほど有病率が高いといわれています。
参考文献)
今回の調査を報告した論文
Iso H
et al. (2006)
“The relationship between green tea and total caffeine intake and
risk for self-reported type 2 diabetes among Japanese adults”
Ann Intern Med. 2006 Apr 18;144(8):554-62.
アサヒコム 緑茶・コーヒーに糖尿病予防効果 全国1万7千人調査
http://www.asahi.com/health/news/TKY200604190516.html
>記事提供:株式会社リバネス サイエンスライター