風邪をひいたとき
お肌が荒れたとき
口内炎が出来たとき
そんな時によく飲まれるのがビタミン剤。
お世話になっている人も結構居るのではないでしょうか?
ビタミン群として多くの種類が知られていますが、
人間にとって必須なビタミンは13種類であると言われています。
今回は、そのなかの1つ
『ビタミンC』に関するお話です。
東京都老人総合研究所の石神昭人・主任研究員と
東京医科歯科大大学院の下門顕太郎教授らの研究グループが
マウスを使った実験から、ビタミンCの不足で老化が進みやすくなることを明らかにしました。
ビタミンCと老化……一体どういう事でしょうか?
まずは、研究の経緯から紹介していきたいと思います。
研究チームは、マウスの体内で老化とともに量が減っていくある酵素を発見しました。
老化の指標となることから、
Senescence marker protein 30(SMP30)と名付けられたこの酵素、
性質や機能を詳しく解析していくと……
ビタミンCを作り出す際に重要な役割を担っていることがわかったのです。
つまり、老化とともにSMP30が減っていけば、
体内で作られるビタミンCもまた減っていくわけですね。
では、ビタミンCの不足が、老化の原因となってしまうのでしょうか?!
それを確かめるためにSMP30を持たず、体内でビタミンCを作る事が出来ない
マウスが遺伝子操作で作り出されました。
このマウスと正常なマウスを比較する事で、ビタミンCの不足が
体にどのような影響を与えるのか調べる事が出来るようになります。
SMP30を持たないマウスと正常なマウスを、ビタミンCが少ないエサで飼育したところ、
6カ月経った頃には正常なマウスはすべて生きていたのに対して、
SMP30を持たないマウスでは半数が死んでしまいました。
これらのSMP30を持たないマウスを詳しく調べてみると、
体重や骨密度の低下、コレステロールの増加、正常な歩行が出来ないというような
老化特有の現象が見られたのです。
また、臓器や血中のビタミンC量を比較してみると、
正常マウスの100分の1程度しかビタミンCが無い事も確認できました。
つまり、ビタミンCを作る事ができない(ビタミンCの不足した)マウスは、
通常のマウスよりも早く老化するという結果が得られたのです!
では、なぜビタミンCが不足すると老化現象が起こるのでしょうか?
そのメカニズムについては、まだまだ研究段階ではありますが、
ある可能性が考えられています。
ビタミンCは、カルニチンというタンパク質の合成に関わっています。
ダイエット食品などとして有名な、あのカルニチンです。
カルニチンは、体内でいくつかの重要な働きをしていますが、
その代表例が、脂肪酸の代謝を助け、エネルギー生産を高めることです。
ビタミンCが不足すると、カルニチンの合成量が低下し、
細胞が活動するためのエネルギーが不足してしまいます。
そのため、細胞が正常に働く事が出来なくなり、老化現象が起こると考えられています。
マウスと違い、人は体内でビタミンCを作る事が出来ません。
つまり、今回の研究結果を、そのまま人に当てはめる事はできないのです。
しかし、この『ビタミンCが作れないマウス』を
『ビタミンCが不足している人』のモデルと考えて研究を進めていくことで
人にも応用できる発見が出来るかもしれません。
このように、病気などの特徴を示すマウスの事をモデルマウスと呼びます
モデルマウスは、簡単に病気の症状を模倣させる事が出来るので、
対象となる病気の原因究明、治療方法の確立などの研究に応用されます。
そのため、モデルマウスが作成出来るかどうかは、研究の進展に大きな影響を与えます。
ビタミンCと老化の関係を示すモデルマウスが作成された事で、
今後、ビタミンCと老化に関する研究が、一気に進展する事が期待できます。
不老長寿の薬は、遥か昔から人間の夢でした。
時にはこの薬を求めて旅に出たり、
国をあげての捜索を行っていた時代もありました。
現在では、科学の力を駆使して老化の原因究明や、
長寿の方法が研究され、実際にいくつかの成果が出ています。
例えば、『線虫(*注)』という、よく研究に使われる生物では、
dafという遺伝子に異常が起こると、寿命が延びる事が知られています。
また、ラットではカロリー制限を加える事で活性酸素の量が減少し、
長生きできることを示す結果が報告されています。
この調子で研究が進んでいくと、ひょっとしたら不老長寿の薬や、
長生きの秘訣が明らかになる日も近いのではないかと思えてきます。
その時には、コンビニのサプリメント売り場で
ビタミン剤と並んで長寿サプリなんて物が売られているかもしれませんね。
* 注:
よく、研究室で扱われる生物の事を「モデル生物」と呼びます。動物では、マウスを始め、線虫、アフリカツメガエル、ショウジョウバエなど。植物では、稲やアラビドプシス(ぺんぺん草)。魚類では、メダカやゼブラフィッシュ。微生物では、大腸菌や酵母などが有名です。これらの生物は、遺伝子配列が全て明らかにされている、飼育が容易、スペースを取らない、体が透明……など、研究を進めていく上で都合の良い形質を持っています。もちろん、多くの研究室で扱われているため、すでに様々な知見が得られていることもモデル生物と呼ばれる理由の1つです。
参照
東京都老人総合研究所・石神 昭人
http://www.tmig.or.jp/J_TMIG/j_research/A14.html
東京医科歯科大大学院・下門顕太郎
http://www.geocities.jp/tmdu3/index.html
yahoo news
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060404-00000015-mai-soci