寝不足で疲れているときや面白くない話を聞いているとき、ついつい出てしまうあくび。自分はするつもりがなくても、隣の人のあくびを見るだけでうつってしまうことがよくありますよね。
 僕はその度に、「どうして、あくびはうつるんだろう?」と不思議に思ってきました。あくび菌なんていう生物が存在するのかも?それともテレパシー?いろいろな候補が浮かんでは消えていき、その理由は未だに謎のままです。
そこで今日は、この場をお借りして、長年僕を苦しめてきた疑問を解決させてもらいたいと思います!

■ あくびがうつる原因は?

あくびがうつる原因について調べるにあたって、まずはいくつか仮説を立ててみました。
@酸素濃度などの環境的要因
Aあくび菌など、うつす人からうつされる人への何らかの物質の移動
Bテレパシーなど精神的・心理的なもの

みなさんはどれが正解だと思いますか?

ここではまず@の仮説について考えてみたいと思います。あくびがうつるのは、酸素濃度が低いなど、特殊な条件下に人がいるからではないでしょうか?しかし、あくびは屋外でもうつりますし、二酸化炭素濃度を上げて酸欠状態にしてもあくびをする確率には変化がないという実験結果が出ています。どうやら、環境的要因があくびの原因になることは少ないようです。

では、なんらかの物質が移動することにより、あくびがうつっているのでしょうか?これを確かめる実験もすでに行われています。あくびの様子が映っているビデオを見せて、あくびが誘発されるかどうかを調べるのです。実験の結果は、被験者の約50%という高い確率であくびがうつるというものでした。ビデオからはあくび菌などの物質は移動して来られないはずなので、物質の移動ではないということがわかります。

■ あくびがうつるためには知性が必要だった!!

次はBの精神的・心理的な原因について考えてみましょう。まずはテレパシーについてですが、テレパシー自体が科学的に証明されていないので、これについてはわかりません(笑)ただ、あくびがうつる原因が心理的なものではないかと考えられる面白いデータがありました。
あくびをする動物は、ヒトやイヌ、ネコなど数多く存在するのですが、あくびがうつるのはヒトとチンパンジーだけだというのです。また、ヒトやチンパンジーでも赤ちゃんの頃は、あくびをしても他からうつらないことがわかっています。このことから考えられることは、あくびがうつるためには、なんらかの高度な知性が必要だということです。では一体どのような「知性」が必要なのでしょうか?

■ 涙もろい人はあくびの伝染に注意しましょう。

その謎を解く実験が2003年に発表された論文に掲載されています。先に述べたビデオの実験に心理テストを組み合わせ、あくびがうつりやすい人の傾向を調べたのです。その結果、他者に共感を覚えやすい人ほどあくびがうつりやすいということがわかりました。つまり、あくびがうつる理由はこのように考えられます。まず、あくびをしている人をみて、その人の感情(眠い、疲れたなど)に共感します。その感情が、具体的なシグナルとなって、あくびを引き起こす脳内の細胞へと伝達されます。そしてそのシグナルによりあくびが誘発されるというものです。   
 ということで、現在までの研究結果をまとめると、Bの「精神的・心理的なもの」が正解となります。

小説や映画を見ると、ついつい登場人物の気持ちになって涙してしまうというそこのあなた。胸に手を当てて考えてみてください。大切な話や会議中に、他人のあくびをみて、うっかり自分もあくびをしてしまった経験はありませんか?僕には思い当たることがたくさんあります・・・。次はあくびがうつらない方法を調べなければいけませんね。

<参考資料・HP>
Steven, M. P. et al. : Cognitive Brain Research., 17 : 223-227 (2003)
CLINICAL NEROSCIENCE Vol.18 No.11 中外医学社 (2000)
京都大学霊長類研究所「HOPE」プロジェクトHP
チンパンジーにおけるあくびの伝染 英国王立協会報(生物学)、7月21日号
http://www.pri.kyoto-u.ac.jp/hope/pub/hope2004-4j.html